小売電気事業者の登録とは、2016年4月以降の電力自由化に伴い、電気事業法によって運営が規制されている電気事業の1つ「小売電気事業」を営む場合に必要なライセンスです。
この小売電気事業登録申請を行う場合、電気の供給能力の見込み量をkWで示す必要がありますが、供給能力を確保する方法は、自社電源、BGなどの相対契約、卸電力取引市場(JEPX)による調達のいずれかが、主な方法となります。
小売電気事業の登録申請ができる自社電源の種類は、次のようなものになります。
【水力発電】
水力発電とは、水の力を利用して電気を生み出す電源を指し、水量が多いほど、流れ落ちる落差が大きいほど、電気を生み出すことができます。
発電方式は、水の利用方法から、流れ込み式、調整池式、貯水池式、揚水式に分類され、落差を得る構造から、水路式、ダム式、ダム水路式に分類されます。
1,000kW未満の小水力発電については流れ込み式や水路式の事例が多いといえますが、既設の砂防ダムや治山ダムの落差を活用したダム式もあります。
水力発電には、次のようなメリットがあります。
◎二酸化炭素(CO2)をほとんど排出しない
◎発電や管理・維持にかかるコストは、他の発電方法に比べて安い
発電を開始した後の発電や管理・維持にかかるコストは比較的安いです。ただし、大規模に水力発電を行う場合のダムの新造には多額の建設費用がかかるなど、初期費用は大きくなる可能性があります。
既設の設備が使える場合は建設コストを安く抑え、建設の時間を短縮できます。また、すでに許可を受けている水量を利用して発電を行う場合は、比較的簡易な手続きで水利権を取得でき、水利権取得までの期間を大幅に短縮できる可能性があります。
なお、出力1000kW以下の「小水力発電(マイクロ水力発電)」は、発電設備やメンテナンスの費用はかかりますが、設置する地域に流水があれば発電が可能ですので、水利権を取得できれば、さらにコストを抑えて地域密着で送電することができます。
◎エネルギー変換効率が高い
水力発電は高所の水を低い所に落とすことで、その流れ落ちる力を利用して水車を廻し、水車につながった発電機を回転させて電気を生み出す自然の運動エネルギーを利用するため、エネルギー変換効率が高いです(80%程とされています)。
◎再生可能エネルギーである
水力発電は貯水などもできるため、降水量が不足する等の余程のことがない限り、安定継続的に発電できる再生可能エネルギーです。
再生可能エネルギーの場合は、省エネ再エネ高度化投資促進税制による税制優遇や、経済産業省等の補助金制度など、国や地方自治体によるさまざまな支援を受けることができます。
◎山が多く起伏に富んだ、日本の地形を利用できる
◎電力需要の増減に対応して発電できる
貯水式や揚水式の場合、水を流せばその分だけ発電機が回る仕組みであるため、電力需要に応じて、容易に発電量を変化させたり発電を止めたりすることができます。
【火力発電】
日本の電気の約70%は、火力発電によって供給されています。
火力発電の方式は、汽力発電、内燃発電、ガスタービン発電、コンバインドサイクル発電の4種類があります。
火力発電用の資源は、石炭、LNG(液化天然ガス)、石油、LPG(液化石油ガス)、その他ガス、歴青質混合物(天然または人造の炭化水素からなる混合物)などの種類があります。
火力発電を行う場合は必ず排気ガスが発生します。そのため、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじんなどの排出量の低減、熱効率向上によるCO2排出量の抑制が求められます。
火力発電には、次のようなメリットがあります。
◎安定的に供給できる
燃料があれば降雨量や天候、昼夜を問わず、安定継続的に供給することができます。
◎エネルギー変換効率が高い
火力発電は消費する燃料に対して得られる電気量が多いため、水力発電に次いで2番目にエネルギー変換率が高いといえます(35~55%程とされています)。
◎出力調整がしやすい
燃料の投入量で柔軟に出力調整できるため、急激な気温の変化によるエアコン需要など、電気使用量が短期的に増加した場合も容易に対応することができます。
◎建設に必要な敷地面積が狭くても発電できる
比較的小さな土地でも、火力発電所を建設することができます。
ただし、CO2の排出量が多いため、その対策に係る費用は大きくなる可能性があります。
【原子力発電】
原子力発電は、火力発電と同じ原理です。火力発電所のボイラーにあたる原子炉の中でウラン燃料が核分裂を起こして熱をつくり、その熱によって水を水蒸気に変え、タービンを回して発電します。
そのメリットは、わずかな量の燃料で大量のエネルギーを生み出せること、発電段階でCO2を全く排出せず大量の電力を安定供給できること、使い終わった燃料を再処理することで再利用できることから、エネルギー資源小国である日本における発電方法として重要視されています。
その反面、放射線や廃棄物の処理について慎重な管理が必要であり、重大事故が発生した場合は環境に甚大な被害を与え、その影響は数千キロメートルを超える広範囲に及び修復が著しく困難となるため、今後の運用に関する是非が問われています。
【新エネルギー等】
新エネルギー等とは、オイルショックなどによる石油等の価格高騰や、地球温暖化防止を背景として「非化石エネルギーのうち経済性の面における制約から普及が十分でないものであって、その促進を図ることが非化石エネルギーの導入を図るため特に必要なもの」と、新エネルギー法第2条で定義されている電源です。
これらの再生可能エネルギーの場合は、省エネ再エネ高度化投資促進税制による税制優遇や、経済産業省等の補助金制度など、国や地方自治体によるさまざまな支援を受けることができます。
新エネルギー等とは、具体的には次のようなものを指します。
太陽光から直接電気を作る太陽電池を利用した電源を指します。
太陽電池の半導体の境目に太陽光が当たることで電気が発生し、電線をつなぐことで電気が流れます。
太陽光が当たり続ければ電気が発生し続けるため、発電段階でCO2を排出することがありません。
また、比較的単純な仕組みであるため、管理がしやすい設備といえます。
その反面、大量の電気を作るには大きなソーラーパネルを設備できる費用や広大な土地が必要になること、雨・曇り・夜の間は発電できず天候に左右されることなどの短所があります。
◎風力発電
風によって回る風車の回転運動を、発電機に伝えて発電する電源を指します。
風の強さや向きによって、羽根の角度や風車の向きを自動的に調整して自然のエネルギーを利用するため、発電段階でCO2を排出することがありません。
その反面、風の強い地域でないと発電効率が悪いこと、風の強さに左右されること、騒音が出るなどの短所があります。
◎地熱発電
地中深くから取り出した蒸気で直接タービンを回し、発電する電源を指します。
地球内部の熱をエネルギー源とするため燃料が不要であることから、発電段階でCO2を排出することがありません。
また、降雨量や天候、昼夜を問わず安定継続的に供給することができます。
その反面、発電可能な場所が火山や天然の噴気孔、硫気孔、温泉、変質岩などがある、いわゆる地熱地帯と呼ばれる地域に限られること、自然の景観に恵まれた場所でもあるため大容量の発電所を設置しづらいことなどの短所があります。
◎バイオマス(メタン発電、廃棄物発電)
木屑や可燃ごみなどを燃焼する際の熱で蒸気を発生させてタービンを回し、発電する電源を指します。
ごみの焼却時に捨てられていたエネルギーを有効利用できるため、発電と廃棄物処理を同時に行う分、CO2を削減することができます。
また、連続的に資源を得られるため安定継続的に供給することができます。
その反面、ダイオキシン類の排出等の懸念がある、発電効率の良い大規模な廃棄物処理施設の建設が困難である、資源の収集や運搬・管理に費用がかかるなどの短所があります。
【その他】
波力発電・潮力発電、海洋温度差発電などがあります。
なお、小売電気事業の電力を自社電源で確保する場合、小売電気事業用に供するための接続最大電力の合計が1万キロワットを超える場合には、資源エネルギー庁への「発電事業届出」が必要な可能性があります。
よしひろまごころ行政書士事務所では、全国対応で、小売電気事業者の登録申請、発電事業届出、アグリゲーターの特定卸供給事業届出などの電気事業に関する手続きを代行・サポートしています。お気軽にお問合せください。
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